懺悔

10tn幕張公演でついに観客ありの会場でClaw My Heartが披露された。僕は現地にいなかった。

パフォーマンス後のMCで朝井彩加さんが無観客での披露は不安だったこと、ようやく有観客で披露できて良かったと涙ながらに語っているのを見て自分が失ってしまったものの大きさを実感した。

 

私が早坂美玲を好きになったのはボイスがついた後の時期でちょうどリトルリドルのイベントが開催されている時期だった。この頃はそれほど早坂美玲のめり込んでもいなかったことや、どうしてもライブに行けない状況だったためライブには行かなかった。なので早坂美玲の初舞台を見ることはできなかった。

しばらくしてライブに行ける環境になり、興味本位で初めてチケットを申し込んだのがSS3Aだった。この時は残念ながらチケットが当たらず、ライブビューイングで観ることになった。私は初めて観るライブの楽しさに夢中だったが、そこで私に雷を落としたのが∀NSWERだった。初めて揃うオリメンでの∀NSWER。この時は直前に流れていたラブデスremixからの特殊な繋ぎで私の脳はパニックを起こしていた。そのパニックのおかげか、突然脳内に∀NSWERのコミュがフラッシュバックし、まるで全ての点が一瞬で繋がるかのような奇妙な体験をした。ここで私はライブの持つ不思議な力に魅了され、ますます早坂美玲にのめり込むようになった。次こそは早坂美玲を現地で見ようと固く誓い、次のライブのチケットを申し込んだ。

次のライブは6thのメラド公演であり、私は幸運なことにチケットを手にすることができた(もっとも、この時はチケットの倍率が低く、誰でもチケットを手にすることはできたのだが)。私は初めての現地にワクワクしながら赴き、初めての現地参加を楽しんだ。現地独特の熱気や演者が肉眼で見える位置にいるという状況は私を大いに熱狂させた。初めて揃ったオリメンでのリトルリドルや、木村夏樹と一緒に歌わせてもらったロキエモは早坂美玲の生のパフォーマンスを初めて観る私にはあまりにも刺激的だった。会場の熱気に酔っていた私は朝井彩加さんと早坂美玲を重ねて観れるようになっていたし、そのことに強い喜びと感動を感じていた。満足感に満ち溢れて現地を後にした私は、次の名古屋公演でも現地で早坂美玲をそしてindividualsを見るべく名古屋公演の現地チケットを申し込んだ。

そして迎えた6th名古屋公演。この公演は私の中で一番思い出に残る公演になった。というのも、2日目の席が2階席の最前、それも前日にindividualsが∀NSWERを披露したステージの真正面、つまり早坂美玲の立つ真正面の席だったからだ。この日、私は今までで一番狂っていた。それもそのはず、この日の∀NSWERはメンバーの3人が別々の道を進んでいく演出があり、私はそれを真後ろからまるでアイドルを送り出すプロデューサーのように見ることができたからである。それだけでもおかしくなるのにおまけでalwaysまで披露されてしまい、私は自分を早坂美玲のプロデューサーなんだと思い込むようになった。正直私と同じ光景を見た人は全く同じ状況になっていたと思う。それぐらいの劇薬だった。

7th公演では、早坂美玲の出演しない公演も全てチケットを取る気で参加し、幕張初日以外は全ての公演で現地参加が決まっていた。幕張公演では早坂美玲のいないライブながらも現地ならではの雰囲気を堪能した。続く名古屋公演にてついに早坂美玲のソロ曲実装が決まった。私は早坂美玲にのめり込むようになってからずっとソロ曲を望んでおり、この発表の際はまるで世界が自分に都合の良いように書き換えられてしまったのではないかと錯覚するほどに喜んだ。その発表から3ヶ月が経ち大阪公演が開催された。このタイミングではギリギリソロ曲ができていそうなタイミングということもあり、ソロ曲をほのかに期待しながら参加したが残念ながら早坂美玲のソロ曲は披露されなかった。しかし、公演自体は満足度の高いものであり、私は次の早坂美玲の公演を心待ちに大阪の会場を後にした。

ついに2020年の4月に早坂美玲のソロ曲がリリースされた。曲は予想よりもだいぶカッコよく、歌詞も早坂美玲らしさの詰まった素晴らしい楽曲だった。しかし、この時期はコロナウィルスが蔓延しており、観客を入れてのライブは期待できない状態だった。それでも私はこのソロ曲をいつか現地で聴ける日を夢見ながらコロナウィルスが去るのを待った。そして2021年の1月、ついに早坂美玲の出演する有観客ライブが開催されることになった。私は幸運にも両日のチケットを手に入れ、開催の日を心待ちにしていた。しかし、コロナウィルスが再び猛威を振るい、残念ながら配信での開催となった。配信でのライブが初めてだった私は自分が現地にいないことに不満を覚えつつ、配信を視聴した。ライブではClaw My Heartが披露されたが、結果としては不完全燃焼というのが正直な感想だった。早坂美玲は周りに理解されないことに苦しみながらもアイドル活動を通して自分の好きなこと、自分らしさを表現することを身につけていった。自分らしさを貫く彼女に何者にもなれなかった私は救われたし、そんな彼女が自分の曲をたった一人で歌うときにそれを受け入れる光でいることで恩返しがしたかった。しかし、当時の私に出来たことといえば、演者には見えないバーチャルの光る棒を画面上で投げるように振ることだけ。早坂美玲を認め、受け入れる光にはなれなかった。私は自分が今まで目標としてきた景色が目の前で徒らに壊され消費されていくのをただ見ていることしかできなかった。そうして初めてのソロ披露を見た私は不貞腐れた。まるで今までの自分が全て否定されている気がしたからだ。気に入らない演出もあったので初めてライブのアンケートで苦情を書いた。それぐらい早坂美玲に惚れ込んでいたし、ソロ曲に賭けていたし、無観客で開催されたことが悔しかった。

そうして不貞腐れていた私にリベンジマッチの機会がやってきた。10th幕張公演である。ついにやってきた有観客でのライブ。ここしかなかった。ここで今度こそClaw My Heartを現地で見て早坂美玲に感謝を届けたいと思った。しかし、私にチケットは当たらなかった。これは言い訳だが、キャパが狭かったし、忙しくて最後の一般に関しては申し込みを忘れてしまった。オタク失格だ。申し込みを1度でも忘れるような人間外れて当然だ。もっと他にあたるべき人がいるのだから。そう思って私は無理矢理納得したつもりになり、当日は友人たちと配信で視聴することにした。しかし、ライブ当日になって恐ろしい事実が発覚してしまった。ライブが全く楽しくないのである。周りの友人たちは楽曲が一曲かかるたびに気が狂ったかのように喜んでいるのに、私はまるで心がドロドロの鉛になってしまったかのように重苦しい気持ちだった。表面上では静かに鑑賞するという体で過ごしていたのだが、私から出る負のオーラが伝わってしまっていたようで何度か場を白けさせてしまった(この件については本当に申し訳ないと思っています。この場を借りて謝罪させていただきます。)。2日目になってついにClaw My Heartが披露された。私が初回で気に入らなかった演出は僅かに改善されており、不満は軽減されているはずだった。しかし、私は前回よりも圧倒的にクオリティの高いパフォーマンスを見ながらどんどん気分が沈んでいた。その答えを見ないように見ないようにとライブを見ていた私へ朝井彩加さんのMCがトドメを刺した。朝井彩加さんは初披露の時は会場からのレスポンスがなくて不安だったこと、今回は観客からのレスポンスで暖かく迎えられているような気持ちになれた安心したといった趣旨の話をされていた。言葉を詰まらせながら涙ながらに語る朝井彩加さんを見て私はついに今まで自分が逃してきたものの重さに目を向き合わせなければならなくなった。早坂美玲の初舞台、individualsの初舞台、そして初めてのソロ披露。その全てを現地で見てこなかった私はその失ったものが決して取り戻せないこと、その重さをここにきてようやく実感し、自分の心の上澄みだと思っていた部分まで全てが鉛になっていたことに気がついた。私は自分を責め、自分が早坂美玲を追い続けていると思っていたことを恥じた。早坂美玲の初ソロまで見逃した自分には早坂美玲を追う資格はないし、追ってはいけないんだと気づいた。友人たちの前では負の感情を抑え込んで帰宅したが、家でついに負の感情が爆発した。負の感情が爆発しても涙すら流せない自分には辟易しつつ、11/29のフェス限の早坂美玲に備えて寝た。

そして11/29の午後3時になりフェス限早坂美玲が実装された。私が腐りきっていることなど気にしないかのように早坂美玲はあっさりと私の元へ来てくれた。早坂美玲を追う資格はないなどと言っておきながらも早坂美玲を諦めきれなかった私はコミュを読んだ。ここ2年間のストーリーの停滞が嘘のような豪華なコミュだった。まるで完璧なアニメの最終回のような鮮やかな伏線回収に、今までの要素全部盛りの最終フォームのようなカードイラスト。これまでにない最高の供給に喜んでいた私だったが、私の心の鉛はそれを許さなかった。コミュの良さにも関わらず私の心はアガりきらなかった。自覚してしまった失ったものたちが喜ぶ私を咎めていた。

私はこれからどうすればいいのかわからない。楽しんでる人たちに水を差したくはないので表向きには心の上澄みの方の鉛を出してひっそりと今後を考えていきたい。

 

誰かに見て欲しいけど誰にも見て欲しくないのでここに書きました。もし、見てくれた人がいたらいい気分になれない記事を読ませてしまってごめんなさい。でもあなたのおかげで私はちょっぴり救われました。ありがとう。